胃がんリスク検診(ABC検診)

1回の採血で胃がんリスクがわかる ABC検診

1回の採血で胃がんリスクがわかる ABC検診胃がんになるリスクは個人差が大きく、特にピロリ菌感染はリスクを上昇させる原因となっています。ABC検診は、胃がん検診ではないので確定診断はできませんが、ピロリ菌感染の有無と、それがベースになって胃粘膜にどのような変化が起こっているかを大まかに知ることができます。検査結果がすぐにわかることもメリットのひとつです。
採血のみという手軽さでリスクを知ることができることがABC検診の大きな特徴です。

バリウム検査と違い、被ばくの心配がありません

これまで、胃がんの検診にはバリウム検査が主に行われていました。しかしバリウム検査は精度が低いため進行したがんを見つけることはできてもリスクについて知ることはできません。そして、バリウム検査は角度を変えて何度もレントゲン撮影を行うため、医療被ばくの問題もあります。
内視鏡検査は粘膜を直接観察するため早期がん発見と確定診断ができる唯一の方法ですし、被ばくの心配もありませせんが、なにも症状がなく、リスクについてもわからない段階で受けることに抵抗がある方がまだまだ多いのが現状です。そうした方にとってABC検診は「内視鏡検査をすぐに受けた方がいいか」「胃がん予防のために最適な内視鏡検査の頻度」を知ることができるメリットがあります。

胃がんとピロリ菌

日本人の胃がんは、そのほとんどがピロリ菌(ヘリコバクターピロリ)の感染により発症することがわかってきています。ピロリ菌が関係しない胃がんは1割に満たない特殊なもので、それ以外の9割がピロリ菌感染に影響されています。そのため、ピロリ菌をみることで、胃がんリスクはかなり正確にわかってきます。
さらにABC検診ではペプシノーゲン法という手法を用いて胃の状態も調べます。ピロリ菌に感染すると、慢性胃炎という状態になります。その中でも胃の壁である粘膜が薄くなっていってしまう萎縮性胃炎が起こり、それが進行することで胃がん発症の母地になります。萎縮性胃炎では、消化不良や逆流性食道炎のような症状が起こりますが、特徴的な症状はありません。そこでペプシノーゲン法を用いて萎縮の進行度合いを検査します。

ABC検診のメカニズム

ピロリ菌の抗体を調べる検査

ピロリ菌は土の中にいる雑菌で、ほとんどは幼少時に感染するとされています。衛生状態が良くなった現在では減少傾向にありますが、母子感染など家族間の感染が起こる可能性が指摘されており、先進国の中で日本の感染率はまだ高い状態です。
胃にピロリ菌が感染すると、体は抗体を作ります。ABC検診では、血液に含まれるピロリ抗体に関する陽性と陰性を調べます。

萎縮性胃炎を調べるペプシノーゲン法

萎縮が進んでいるかどうかを、血液中のペプシノーゲンという物質を調べて判断します。ペプシノーゲン陽性であれば、萎縮が進んでいます。

リスク判断

ピロリ菌の陰性・陽性、ペプシノーゲンの陰性・陽性を元にリスクを判断していきます。この2つの検査結果を合わせてABCDEFという6つのグループに分類されます。

A群

ピロリ菌がいない状態で、萎縮性胃炎も起こしていない健全な胃です。

B群

ピロリ菌がいますが、胃の委縮が進んでおらず、萎縮性胃炎になっていない状態です。ピロリ菌除菌治療と内視鏡検査を受ける必要があります。

C群

ピロリ菌がいて、胃の萎縮が進行しており、胃がんが発生している可能性がある状態です。できるだけ早く内視鏡検査を受け、ピロリ菌除菌治療を受ける必要があります。

D群

ピロリ菌がいない状態で、胃が萎縮しています。このケースではピロリ菌が最初からいないのではなく、何らかの理由によりいなくなっています。できるだけ早く内視鏡検査を受ける必要があります。

E群

治療などによりピロリ菌が消えてしまった状態です。できるだけ早く内視鏡検査を受ける必要があります。

DEの萎縮があってピロリ菌がいない場合、ピロリ菌すら住めない環境になってしまっているケースもあります。そのため、萎縮があると疑われる場合には、すぐに内視鏡検査を受けてください。

F群

 

危険度について

ABCDEのうち、正常なAを除くと、BからCDEとリスクが高まります。胃がんは早期発見と的確な治療により、日常生活に大きな影響を与えずに完治できる病気になってきています。そのためにもB群と判断された場合も必ず内視鏡検査を受けてください。

ABC検査後の確定診断

BCDEの場合、内視鏡検査を行って、同時に行う細胞診で確定診断を行います。疑わしい病変を内視鏡で見つけ、それを採取して病理の検査を行います。病理の検査結果は4日から1週間程度でわかります。当院には特殊な光を使って見落としにくい病変を見つける精度の高い内視鏡視システムを導入しています。病変がない場合には経過観察になります。